豊臣兄弟!第25回「美濃の熊殺し」安藤守就の追放劇とドラマの衝撃

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第25回「変事の予兆」では、絢爛豪華な安土城の完成披露の宴が描かれました。しかしそのめでたい席の裏で、長年織田家に仕えてきた重臣・安藤守就(田中哲司さん)と林秀貞が、突如として領地を没収され追放されるという衝撃の粛正劇が勃発しました。安藤守就と嫡男の定治はこの先どうなるのか?史実とドラマの両面でみていきます

信長が突きつけた表向きの理由は「余興の相撲で負けたこと」でしたが、その真の理由は武田家との内通疑惑でした。この不穏な噂を流して彼らを意図的に失脚させたのは、かつて「美濃三人衆」として共に戦った因縁の相手・稲葉良通(一鉄)であることが明らかになります。

潔白を主張する守就でしたが、実は息子の安藤定治が陰で本当に武田と内通していた事実を知ることに。このままでは、最愛の娘・慶(吉岡里帆さん)の夫である小一郎秀長や、羽柴家にまで累が及びかねないと察した守就は、自ら家を出て姿を消す決意を固めます。「わしは美濃の熊殺しと呼ばれた男だ!心配するな」と力強い言葉を残して去っていった守就。ドラマ後半での再起を予感させる退場劇となりましたが、史実における彼の運命はどのようなものだったのでしょうか。
史実検証:安藤守就の追放理由と信長が抱いた「嫌疑」の真実

史実において、安藤守就が信長から粛正されたのは天正8年(1580年)8月のことです。林秀貞や丹羽氏勝と共に、突如として織田家から追放処分を受けました。太田牛一が記した『信長公記』には、この3名の追放理由について以下のように短く記録されています。
「先年信長公御迷惑の折節、野心を含み申すの故なり」
(意訳:先年、信長公が各方面からの包囲網で苦戦を重ねていた折、それに乗じて野心を抱いたためである)
美濃・尾張を本拠地として天下布武を推し進める信長にとって、美濃の旧土岐氏・斎藤氏時代からの有力国人領主であり、現地に今なお強大な勢力を張っている安藤守就の存在は、常に潜在的な脅威(地雷)でした。名目上は過去の不忠(武田家や本願寺等との内通嫌疑)を理由にしていますが、包囲網を脱して権力を盤石にした信長による、古い国人勢力を排除して直轄支配を強めるための「政治的な世代交代・お家潰し」であったと推測されています。
本能寺の変での再起と挙兵、そして安藤家滅亡の最期

ドラマで「美濃の熊殺し」としての意地を見せて姿を消した守就ですが、史実における最期は、まさにドラマのクライマックスとなるあの「歴史的大事件」の直後に訪れます。天正10年(1582年)6月2日、本能寺の変が勃発し、主君・織田信長が明智光秀によって討たれると、潜伏していた安藤守就はこれを旧領回復の好機と捉えました。即座に息子・定治ら一族と共に挙兵し、かつての自身の本拠地であった「北方城(きたがたじょう)」を急襲して占拠。見事に奪還し、美濃における大名としての再起を試みたのです。
| 歴史のタイムライン | 安藤守就(一族)の動向 | 対抗勢力(稲葉家)の動きと結末 |
|---|---|---|
| 1580年(天正8年) | 信長より嫌疑をかけられ美濃を追放 | 林秀貞らと共に失脚。領地は没収され稲葉良通らの支配下へ。 |
| 1582年6月2日 | 本能寺の変に乗じて挙兵 | 隠れて一族を集結させ、旧領の北方城を電撃的に奪還・占拠する。 |
| 1582年6月上旬 | 北方城攻防戦で敗北 | 当時の北方城の正規領主であった宿敵・稲葉一鉄(良通)の大軍に包囲され猛攻を受ける。 |
守就の挙兵に対し、当時の北方城の正式な領主となっていた稲葉一鉄(良通)が激怒し、即座に大軍を率いて北方城を完全包囲します。激しい攻防戦の末に安藤軍は敗北を喫し、本能寺の変からわずか6日後の6月8日、安藤守就は息子たちと共に自害。劇的な再起の夢は破れ、美濃安藤氏は歴史の闇へと消え去ることとなりました。『稲葉家譜』の記録によると、守就の享年は80歳という、当時としては驚異的な高齢であったと伝えられています。
大河ドラマでも、この本能寺の変の直後に、再び守就と定治が北方城を舞台に最後の戦いを挑む熱い散り様が描かれる可能性が非常に高いと考えられます。娘の慶や、秀長ファミリーにどのような心理的影響を与えるのか、今から覚悟して見届ける必要があります。
次回第26回「さらば、信長」の見どころと予習動画
安藤守就の追放により、織田家の中に不穏な空気が張り詰める中、物語はいよいよ本能寺の変の直接の引き金となるエピソードへと突入します。次回第26回に向け、大きく動く三大ポイントをチェックしておきましょう。
① 光秀と長宗我部元親の関係崩壊(四国問題)
明智光秀(要潤さん)が何年もの歳月を費やし、信長との間に強固な信頼関係を築いてきた四国の覇者・長宗我部元親。しかし、信長は突如としてこれまでの同盟方針を撤回し、元親を討伐することを一方的に決定します。光秀は自らの外交努力を足蹴にされ、自らの手でその信頼関係を破壊せねばならないという、絶望的な板挟みに追い詰められていきます。
② 織田信澄への内通疑惑と光秀の失脚フラグ
信長の甥であり、四国同盟を支持していた織田信澄(緒形敦さん)にも「長宗我部に内通しているのではないか」という疑いの目が向けられます。信澄は必死に無実を訴え、これを見かねた光秀が「すべての責任は私にあります」と身を挺して庇いますが、これが信長の逆鱗に触れることに。光秀は信長から激しく蹴り倒された上、信澄の監視役という屈辱的な任務を命じられます。
③ 豊臣兄弟の奮闘「家族の力」で信長を笑わせろ!
破滅へ向かう信澄や光秀の状況を憂いた主人公・秀長(小一郎)と兄の秀吉は、信長を自分たちの長浜城へと招待する計画を立てます。殺伐とした乱世の空気を変えるため、羽柴家総出の全力の余興によって「信長を心から笑わせよう」とホームドラマさながらの奮闘劇を展開します。この「家族の温かさ」が、冷徹な魔王の心を動かすことができるのでしょうか。