べらぼう第46回考察|蔦重の“帰ってきた父”は本物ではない? 平賀源内そっくりの謎の男の正体と、史実・蔦屋家の家系を解説

■ 第46回で登場した“蔦重の父”は誰なのか?
曽我祭りの混乱の中で、蔦重の前に突然現れた“父”。 しかしこの人物、声も、雰囲気も、年齢も、これまで語られてきた蔦重の父親像と一致しません。ドラマガイドでもこの男は 平賀源内にそっくりな男を町で探して連れてきた人物であり、 蔦重の本当の父親とは無関係のように書かれています
つまりこの登場は、
- 平賀源内生存説の混乱・誤認を強調する演出
- 蔦重の“心の揺らぎ”を表現するための見せ場
- 治済・定信の策略に揺れる物語全体の象徴シーン
として配置された可能性が高いといえます。
■ 史実の蔦屋重三郎の父・母について
ここで、史実の蔦屋重三郎の両親を整理します。
● 父:尾張国出身の丸山重助
史料では蔦屋重三郎の父は尾張出身の丸山重助と伝えられています。 職業については明記がありませんが、後世の研究では
吉原という特殊地域に関わる職に就いていた可能性が高い
と推測されています。
● 母:江戸の津与(つよ)、広瀬氏出身
母の津与は江戸・広瀬氏の出身とされ、庶民層ながらも地元ではしっかりした家柄だったようです。
● 本名は「柯理(からまる)」 → 7歳で別れ、養子に
蔦屋重三郎の本名は柯理(からまる)。 7歳のときに父母と別れ、商家の喜多川家の養子となります。
このときに「蔦屋」という屋号の家に入り、 ここで重三郎は商才を磨き、のちの耕書堂開業へとつながります。
● 江戸進出後に両親を引き取ったという説も
蔦重が日本橋に進出し成功したのち、 実父母を江戸に呼び寄せて暮らしたという説も残っていますが、 確かな史料はなく、詳細は不明です。
■ 第46回の“偽の父”はなぜ配置されたのか?
史実と照らし合わせると、第46回の父親らしき男が 本物でないことは明白です。では、なぜこの人物を登場させたのか?
● ① 平賀源内生存説の“混乱”を強調するため
第46回〜最終章は「源内生存説」を軸に物語が展開します。 その中で「似た男が存在する」という事実は、 生存説のリアリティを一気に高めます。蔦重が源内を追いかけ、長谷川平蔵が「まさか」と声を漏らすシーンと連動させると、 視聴者を混乱させる効果が最大化されます。
● ② 蔦重の“心の揺らぎ”を描くため
曽我祭りの混乱の中で、久しぶりに(偽の)父と対面した蔦重。 これは蔦重という人物の感情の揺れを描くために非常に効果的な演出です。
● ③ 治済・定信の策略の入り乱れる“狂騒”を表現
第46回は登場人物全員が混乱し、 治済の毒饅頭事件で場が完全に狂い始めます。そんな中に紛れ込む“偽の父”は、物語全体の 混沌・狂気・カオスを象徴する存在だといえます。
■ まとめ:第46回の“父親”は平賀源内生存説を補強するための“象徴的キャラクター”
総合すると、この謎の男は——
- 蔦重の実父ではない
- 源内そっくりの別人
- 生存説の混乱を強調する装置
- 蔦重の感情描写を深める役割
史実の蔦重の両親像とも完全に矛盾するため、 この人物はドラマオリジナルのミスリードキャラといえるでしょう。最終章に向けて物語が大きく動く中、 この“偽の父”は源内の影を各所に漂わせる脚本上の細かい仕掛けとして 非常に重要な役割を担っていると考えられます。
▼最終回の結末を動画で詳しく解説しています(YouTube)
2025年11月28日にNHK出版より発売された『大河ドラマ べらぼう 蔦重栄華乃夢噺 完全小説版 第4弾』には、第37話〜48話(最終回)までのあらすじが台本をもとに小説化された形で収録されています。ここでは第46話「曽我祭りの変」、第47話「饅頭こわい」、そして第48話(最終回)「蔦重栄華乃夢噺」の内容を、書籍から読み取れる範囲で動画で解説しています