「一橋治済の最期、長谷川平蔵に島流しで阿波の孤島に送られた！？」─ドラマ『べらぼう』と史実のギャップを読み解く
11代将軍の父、一橋治済の最期はどんな最期を迎えたのか？大河ドラマ『べらぼう』第43回では松平定信は11代将軍・徳川家斉の実の父である一橋治済の企てに嵌められ幕府権力闘争の渦中から失脚していきました。 そして44回では松平定信らによる一橋治済への復讐計画が企てられていきます。ドラマでは数々の悪事を働いてきた一橋治済ですが、どんな最後を迎えるのか？本記事では「ドラマ設定」と「史実記録」を対比しながら、その誤差から脚本意図を読み解きます。※この記事では第47話以降のドラマあらすじのネタバレを含みます
■ ドラマ『べらぼう』で描かれた治済への復讐計画
第43話では松平定信が「一橋治済」の策略にはめられ政から外され失脚していきました。「一橋治済」に強い恨みを持った定信は治済への復讐劇を考えます。そこで定信が考え出したのが「平賀源内生存説」です。平賀源内が生きていたという噂をひろめ、治済の動きを探りおびき出し数々の悪事を明るみにしこの世から抹殺する計画です。しかしこの計画は事前に「一橋治済」に情報が筒抜けになっていて失敗に終わってしまいます。その理由はこの計画に加わった人物の中に治済とつながってたスパイがいたからだと思われます。
定信の治済復讐の計画に参加したのは下記の6名です
松平定信（この計画の発起人）
長谷川平蔵
三浦庄司
柴野栗山
元大奥の高岳
蔦屋重三郎
追加参加：大崎（十一代将軍家斉の乳母）家斉の将軍就任後大奥で絶大な権力を持ったといわれる
■ 一橋治済に雇われたスパイは誰だったのか
高岳は大崎が徳川家治の嫡男家基の手袋に毒を仕組んだと目星をつけていました。しかし手袋は意次と高岳のてによって家基に渡されたものなので自分に疑いがかかることを恐れ口をつぐんでいました。しかし高岳がこの件を定信に訴えると、定信は平蔵を使って大崎を探すよう命じました。平蔵は当時意次からこの手袋の捜索を命じられていたので三浦を訪ね当時の背景をきいていました。こうして集まったメンバーに蔦屋重三郎と柴野栗山が加わりました。そして平蔵によって捕らえられた大崎も一橋を呼び出すための囮となり計画にくわわりますがその計画の途中で何者かに暗殺されてしまいました。
以上のことからスパイとして考えられるのは三浦庄司か家斉の教育係の柴野栗山が絞られます。柴野栗山は孔子の教えに基づいた国づくりを目指す人格者であり、重三郎が身上象半減の罪で摘発されると、ていに寛大な裁きを嘆願され、ていとの問答の末、彼女の主張に同意し、定信に重三郎への厳罰を断念させた人物です。三浦庄司については、田沼側の情報が筒抜けで一部で「スパイ説」などの声も上がっていたがドラマでは円満退場でその疑惑も晴れたとみられていましたが、ここにきて何故また再登場するのか？三浦役を演じた原田泰造のクランクアップインタビューでも「でもね、これから最期、びっくりするようなことが起こりますから（笑）」のコメントがこの伏線になるのか。
■ ドラマべらぼうでの一橋治済の最期
NHK出版のガイドブックあらすじをみると一度失敗した定信の一橋復讐計画は蔦重の驚きの反撃策に見事にはまった一橋治済は松平定信や長谷川平蔵に捕らえられ、ひそかに阿波の孤島に送られ、ひとしれず治済の成敗を成し遂げたとなっています。しかし大河ドラマの脚本のルールとしては脚本を書くときに史実に基づき歴史考証の先生が「あったかもしれない」といえるレベルまでの歴史とのすり合わせが必要となりますが今回この脚本を脚本家の森下佳子さんはどうねじ込んでいくのか？治済の替え玉が用意されていた説が浮上しています
zenkokuichinomiya.hatenablog.com
■ 仮説検証──「島流し」と治済の能面に隠された秘密
第43回の中で唐突に治済が能面を選ぶシーンが登場しました。広間に広げた22枚の能面のうち治済が顔にあてていたのは「泥真蛇」という「女の怨霊で、激しい怒りを象徴した」面でした。しかし治済はその面を顔から外すとなぜかしっくりこない表情を見せます。その後、別の面に目を留め、手に取ったのは「俊寛」の面でした。治済は笑みを浮かべました。この「俊寛」という面は、平安時代末期に鬼界島へ流罪となった僧侶、俊寛僧都の悲劇的な生涯を表現した専用の男面で「島流しにされた悲観と憔悴を表現した」能面です。すると能面を付けたまま、治済は納得したように何度もうなずきました。これは治済のこの先の未来を予見するようなシーンです。そしてこの「俊寛」の面に治済が阿波の孤島に流される理由の秘密が隠されていそうです。
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